妊娠・出産・育児
育児休業制度は、育児休業の取得を安易にするためと育児のために会社を退職せずに済むよう、その後の職場復帰(雇用の継続)を支援する目的として設けられた制度です。
まず、産前産後休業と育児休業の違いを理解しておきましょう。産前産後休業は、「労働基準法」で妊娠・分娩という母体の負担や妊娠前の状態に復するという母体保護を目的としています。パート・アルバイトなど雇用形態に関係なく、産前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)以内に出産する予定の女性従業員が休業を請求した場合は就業をさせない。さらに、産後56日間を経過しない女性従業員を就業させることも原則禁止しています。
一方育児休業は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で、雇用の継続を目的とし一定の従業員を除いて、男女を問わず休業等の申し出をすることができます。
なお、出産した女性従業員は、労働基準法で産後休業が認められているので、育児休業は出産日から58日目以降からとなります。
<例え>出産日:10/1
産前休業 ← 42日間 → |
産後休業 ← 56日間 → |
育児休業 ← 子が1歳 → |
||||
10/1 | 10/2 | 11/26 | 11/27 | |||
← 58日目 → |
給付の種類
出産育児一時金・出産手当金・育児休業基本給付金や育児休業者職場復帰給付金など妊娠・出産・育児に関連して支給される給付について説明していきます。
出産育児一時金とは
健康保険の被保険者や被扶養者が出産をしたとき、1児ごとに一定額が一時金として支給されます。これを出産育児一時金といいます。給付される金額は、一律35万円です。多生児を出産したときは胎児数分だけ支給されますので、双子の場合は2倍、三つ子の場合は3倍になります。また、死産や切迫流産の場合でも、妊娠月数4か月(85日)以上の場合は出産育児一時金が支給されます。
Q | 高校生の娘が出産した場合、出産育児一時金は支給されるのでしょうか? |
A | すべての被扶養者に家族出産育児一時金として支給されます。 以前は被扶養者である妻が出産したとき配偶者出産育児一時金として支給されていましたが、平成14年10月から支給対象を妻以外の被扶養者にも拡げ、家族出産育児一時金と名称変更されています。 |
Q | 早産・流産・人工妊娠中絶の場合も出産育児一時金が支給されるそうですが… |
A | 健康保険でいう出産とは妊娠85日(4ヶ月)以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶をいいます。また、正常な出産、経済上の理由による人工妊娠中絶は、健康保険による療養の給付の対象からは除かれますが、出産育児一時金の対象にはなります。異常分娩の場合は、療養の給付も出産育児一時金も支給されます。
* 出産に関する給付は、主に母体を保護するために行われるものですから、父の不明な子の出産、妊娠4ヶ月以後の死産や流産などでも支給を受けることができます。 |
Q | 出産の費用に出産育児一時金を充てることができるそうですが… |
A | 被保険者の事前の申請により、医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取ることができる仕組みが導入されました。 |
出産手当金とは
健康保険の被保険者が妊娠出産のために指定された条件の期間、会社を休む場合に支給されます。これを出産手当金といいます。つまり、出産のために仕事に就けず給料が得られないことへの、所得保障の意味合いがあります。
給付される金額は次の通りです。
産 前 休 業 | 産 後 休 業 | |||||
← 42日 → | ← α日 → | ← 56日 → | ||||
出産手当金 | 予定日 | 出産日 | 出産手当金 |
上記の通り、出産予定日の前の42日間(多胎妊娠の場合98日)と、産後56日間です。予定日よりも出産が遅れた場合は、その分プラスされます。ただし予定日よりも早く出産となるとマイナスされます。
Q | 賃金月額が28万円の場合の出産手当金の支給額は? |
A | 標準報酬日額9,330円 / 産前42日+産後56日=98日 9,330円××98日=609,560円 支給額は609,560円になります。 |
Q | 出産育児一時金・出産手当金を受けたあと、雇用形態をパート勤務にします。1年のパート収入は100万円です。出産育児一時金・出産手当金は収入に含まれるのでしょうか? |
A | 健康保険の給付金は失業給付金と同様税法上非課税扱いになります。よって、収入には含めません。 |
Q | 出産後30日で夫が転勤になり退職することになりました。受給中の出産手当金はどうなりますか? |
A | 資格喪失日(退職日の翌日)までに被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者の資格を失ったとき現に出産手当金の支給を受けているか、受ける条件を満たしている場合は、在職中と同様出産手当金が支給されます。 このケースでは、56日-30日=26日。26日間の出産手当金が支給されることになります。 |
Q | 早産・流産・人工妊娠中絶の場合も出産手当金が支給されるそうですが… |
A | 産後の56日間(強制休業期間は6週間:42日間)は働かせること自体が禁止されています。妊娠85日(4ヶ月)以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶も出産として扱われますので産後休業が無給の場合は出産手当金が出産日の翌日から56日間までの範囲内で支給されます。 |
育児休業給付金・職場復帰給付金とは
育児休業給付金は、一定の要件を満たした雇用保険の被保険者が1歳(一定の場合は1歳6ヶ月)未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に支給される給付金です。
職場復帰給付金は、育児休業を終了した後も引き続き被保険者として6ヶ月雇用された場合に支給される給付金です。
Q | 育児休業給付金の支給対象者は? |
A | (1)1歳(一定の場合1歳6ヶ月)未満の子を養育するために育児休業を取得する男女従業員。 (2)育児休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上。 |
Q | 育児休業基本給付金の支給対象者にならない人は? |
A | 育児休業を開始する時点で、育児休業終了後に退職することを予定しているもの。 |
Q | 支給対象期間延長に該当する場合はどんなとき? |
A | 保育園の実施を希望し、申し込みを行っているが、その子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合。(無認可保育施設は含まない) |
Q | 育児休業給付金・職場復帰給付金の支給額は? |
A | 育児休業給付金は 賃金月額(休業開始時賃金日額×支給日数)×30% 相当額 職場復帰給付金は 賃金月額×20%×育児休業給付金支給月数 相当額 <例> 賃金月額28万円 / 給付金支給月数10ヶ月 |